大きな主語の「お客様」はお互い様って言葉を知っているのだろうか?

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お客様という神様が現人神とあらせられてかれこれ何年たっただろうか。

ミニマリストが働く人を馬鹿にするという一件があってから、記事で僕の意見(批判)を表明するうち、一般的な評価としても、働く人への価値観が貶められているように思うようになった。

例えば、お客様が従業員に対して要求するハードルは日増しに高くなっているように僕は感じている。みなさんはどうだろうか? 提供されるスピード、提供時の丁寧さ、言葉遣い、立ち居振る舞いまで、従業員の行動に対してつぶさなチェックがなされる現状を顧みてどう思われるか。働いている側としては息が詰まってくる環境と言っていいのではないか。

常識として、人と人が相対する時、最低限の礼は重んじなければいけない。なぜ、常識なのか。それは意思疎通を円滑にするために有効だからだ。口汚ければ気分が悪い、昔なら腰の二本を抜いたかもしれない。即、生き死にの問題になった。お互い感情的にならないために、最悪の事態を避けるために礼があった。気持ちよくなるために礼はあるのではない、気持ち悪くならないために礼はあるのだ。現代もそれは変わらない。礼はお互い様であって、何も従業員側だけがその礼を重んじるのではなく、お客様側も同じだけ礼とは重んじなければいけないものだ。お客様も人であり、お客様に対して物やサービスを提供するのもまた人だ。お客様は神様などではなく人だ。従業員も犬畜生でも奴隷でもない、同じ人だ。

僕はこの大きな主語で語られる「お客様」が恐くて仕方がない。接客業に従事していた時は勤務中ずっとロシアンルーレットをしている気分だった。いつか誰かがハズレをひかされる運命にある、そういった恐怖が仕事の根底にあった。そのハズレの可能性をできるだけ少なくするために業務の効率化や正確性を向上させ続けた。何も雇い主から要求されるからではなく、ただこの「お客様」という怪物が恐くて恐くて仕方がなかった。

「ペンは剣より強し」

まさにリットンがリシュリューに語らせた「俺がサインすればてめえを断頭台で首を落とせるんだぜ」という意味と同じように今の御時世なっているのは空恐ろしい。現代訳なら「俺がクレームつけりゃお前なんてすぐにクビだ」という具合だろうか。物理的ではなく社会的に殺される分ましになったと評価すべきなのだろうか? そうではないだろう。

ぜひとも「お客様」にこそ人間宣言をしていただきたいと、いや「ほかより劣るサービスを受けるなんて損だわ!」と我欲にまみれた邪神ならいっそ退場してもらいたい。と、そう思った。おわり

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『大きな主語の「お客様」はお互い様って言葉を知っているのだろうか?』へのコメント

  1. 名前:うみ 投稿日:2015/07/23(木) 13:44:35 ID:f2936de23 返信

    お返事ありがとうございます。
    こちらこそ丁寧なお返事ありがとうございます。
    はい、想いはよく伝わり、私自身も人生で実行していきたいなと思っています。
    本当に、誠実で頑張っている人を大事にして成長する社会であってほしいです。

  2. 名前:うみ 投稿日:2015/07/23(木) 12:00:11 ID:f2936de23 返信

    コンビニの記事はファクトベースなので面白かったです。しかし、今回の記事は一般化してしまうことで、問題が見えにくくなっているように感じます。「息が詰まってくる環境」については観念的に感じました。

    確かにそのように感じている労働者はたくさんいるのだと思いますが、実際としては、優先的地位にいる者が労働者に過労を押し付けてくる案件って、一つ一つ異なっていて、雇用主の癖だったり地域性だったりさまざまですよね。

    また、ペンと剣について。個人の内心の自由が約束されたのは近代のことなので、そのあたりも踏まえて中世と比較すべきかなあと思います。

    もちろん、労働者の過酷な環境の改善は一刻もはやく改善すべきですし、自覚なき客こそがひどい店や社会をつくっているとは思っています。

    • 名前:西沢朋 投稿日:2015/07/23(木) 12:22:11 ID:1c66d36f5 返信

      丁寧なご批判感謝いたします。

      筆者自身がこういうのも読者に失礼なのでしょうが、今回の記事は見えづらいな、と書いていて思っておりました。では、もっと掘り下げてから書けよと言うご指摘もごもっともでしょうが、うみ様のおっしゃられる「実際としては」という部分が僕にはまだまだ欠けているためか、僕が実際触れていないネット検索で出てきた具体的な記事の引用を使用して執筆した所、かえって混乱してしまったのです。

      例えば、twitterでのうみ様との会話で挙がりました「宅配業界」の話でも、不在にはペナルティを設けてもいいのではないか? という意見がある一方で、「不在票を届けることが我々の仕事ではない」とする企業側の努力不足とする意見も内々であるようです。ベルを鳴らさず不在票だけ残して還るというサボりのテクニックもあるようで、所謂「うまいことしてしまう」人との兼ね合いもあります。

      「雇用主の癖、地域性」というアングルからも調べてみたいと思います。多角的に鑑賞すれば、自ずと問題の輪郭がはっきりしてくるはずだからです。そう言った意味でも大変貴重なコメントありがとうございます。

      僕の記事なんて草葉の陰の死に体のような陳腐なものであるかも知れませんが、頑張っている人・誠実である人は穏やかに暮らせる世の中になってほしいという考えは伝わればと思っております。