掌編小説ノベログを立ち上げようと思う

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サイトデザインなんかを文芸誌風に出来ればいいなと思ってます。

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概要

表題(誌名)は「五分掌小」(ゴフンショウショウ)

読了時間五分を目安に、極短い掌編小説縛りのノベログ。

具体的な長さは原稿用紙換算で5枚程度まで、文字数で2,500文字程度までで完結する作品。

ジャンル問わず。

連載も可。ただし、1話読了五分制限。

コンセプト「短い時間で読み応えのあるものを」「漫画の1話よりも手軽な小説」

目的について段階的に。1,ディスプレイでも見やすいサイトをデザインする。2,文字数を限ることで筆者(僕)自身の筆力向上を狙う。3,読者との双方向性を愉しむ。

当面は孤軍奮闘するだろうが、望めるならばたくさんの作家さんと同人誌的に発展できれば面白そうだなと思っています。僕に才能がなければ永久にひとりでしょうが……。

喫緊の課題

読者がつかねばなんにもならない。

僕の筆力と相当の作品数、ウェブで小説を読むということが苦にならないようなサイトデザインが課題か。

筆力は読みまくり書きまくるしか道はない。

サイトデザインに関しては、縦書き、見やすいフォント、シンプルなデザインを具体化したいと思っている。読者のコメントを得られれば、それをまた反映させたい。

ちなみに提出したい作品はこんな感じ

仮表題「死がない話」

以下本文

 再会を逃す存在を思い起こす度、生きているものと断定し日々過ごしているが、確たる証拠は何一つないのが現実である。旧知の死はしばしばあり、それが母なら子なら最愛だったならと考えれば、ぞっとする。死は実感しなければならない。死者は死者として出会い直さなければならない。

 こんな話がある。
 とある情報科学に秀でた国で、生涯を送った男の惨事だった。

 伽藍堂の新築一軒家にあるサーバーへ行政から投函された「生涯情報記録の停止に関するお知らせ」と題する書類と、それに関するものが他に二三、ローカルエリアネットワークの無線網に自動接続された男の携帯端末へ転送された。まだ若き家主のこの男は表題を見て息をつまらせた。

 この国では産まれてすぐ、個人の五感と音声を情報にして発信する微細装置を体に埋め込む。生涯に渡る情報を全て記録し、当人が肉体の活動を停止したと確認されれば、その膨大な情報を頼りに、仮想空間上に生き写しを拵えた。
 この機能をより確立するため、遺体は厳重に隠された。たとえ直接の親族であっても死に目に会えず、死亡診断書も葬儀も墓もない。死は国民から尽く避けられた。その上で、人工人格とは電話回線を通じ交信でき、死者はさも生き続けているかのように振る舞った。これを持って永遠の命が完成したと高らかに謳った。

 男への届けは妻の人工人格形成に関するものだった。産まれるはずだった子息に予定されていた装置埋め込み予約が破棄された旨も二三に紛れてあった。靴も脱がず書類を読み終え、玄関から眺めた薄暗い家はいやに広かった。

 後日、男は妻に電話をかけた。女は男の「もしもし」を聞くやいなや泣き出し、嗚咽混じりに言葉にまでなれない声を何度も出した。巡り巡ってようやく成った言葉は「ごめんなさい」で、男は返す言葉を躊躇した。優しさや励ましは腫れ物に触るようでどれも不穏当に思え、痛みも冷たくなる感覚もなかった死産は未だ不確かなことだった。ただ、男に頷くしかさせなかった合成音声は紛れも無く妻のそれだった。

 幾日して、男は電話回線を増やし、一つを女との専用回線にした。固定器をスピーカーとつなげ、マイクも無指向性で感度のいいものを調達した。リビングであれば、妻がそこにいるように会話ができた。男は家と職場を直行直帰するようになり、空いた時間は家事を熱心にやった。

 料理にハマりこんだのは、オープンキッチンでリビングと直接開けていたからだが、味を似せようとも逼迫していた。そんな男の目的と人工人格の認識の間には齟齬があった。電話の向こう側にいるだろう女は料理を直接自分の目で舌で味わうことは出来ず、男の微細端末からの味覚情報を共有するしかなかった。男の舌が官能し、男が感じた塩加減を女は受け取っているに過ぎず、妻の手料理を再現しようという男の目論見は失敗を続けたが、数をこなした分、様にはなった。こうではない、ああではない、と意見を交している環境はいつまでも変わらないぬるま湯であった。これをこの時の男は幸せと解釈した。

 男はまだ若かった。稼ぎも人並みで快活な寡夫に言い寄る女性が現れることを周囲は良しとした。妻に先立たれた悲しい男を癒す女という絵面は好印象であったし、言い寄る女も、男の悲哀で刺激された母性が同情を生み、同情が恋慕に至る道筋は自然で健全な変遷に思えた。ただ、男だけがこの一連の反応を不謹慎な破廉恥と受け取っていた。
「妻が家で待ってる」

 食事へ執拗に誘う女に放った男の何気ない職場での一言は、素知らぬ顔で聞き耳をたてていた物全員をぎょっとさせた。

 上司が二人だけの席で、子孫や老後を持ち出し、肉体のある女を切実に勧めたが、男は理屈でわかっていても腑には落とせなかった。「うまくやればいい」と上司は言ったが、永遠の命を信じていた男にとっての再婚は重婚で、別の女との食事は不倫だった。

 男が四十を過ぎた頃、周囲は愛想を尽かし、冷めず温まることのないリビングで老い続けた。

 定年後のある日、湖畔の散歩道を女と携帯電話で繋がりながら過ぎていると、雁が一羽、涼緑の影からすうっと湖上を滑るように漂い出てきた。弱々しくさえずるものだから、さては取り残されたかと男が思ったつかの間、バッと広げた翼は身の丈以上はあろうか、凛々しく湖面を騒がし始め、雁は男を裏切った。その姿が脳裏に焼きつきはなれなかった。

 リビングへ帰ると、かけっぱなしの携帯電話を通った男自身の声がスピーカからやまびこのように帰ってきた時、男ははっとした。なんと汚いしゃがれた声か。そんなシワだらけの声の隙間をぬって聞こえる女の声は女のままだった。
「君は、一体誰なんだ」

 この瞬間、夫の中で妻が死んだ。
 時の止まった子供部屋、その中央に位置する小さなベッドには今も柵がある。

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